ベテラン医師からのメッセージ

  • ※施設名、肩書はホームページ作成当時のものです

若き心臓血管外科医のトレーニング

秋田大学医学部附属病院 心臓血管外科 教授 山本 文雄

若き心臓血管外科医のトレーニングは重症患者の全身管理から始まります。呼吸循環の生理学的知識を背景に、手術後の患者さんの呼吸、循環管理を徹底的に教わります。さらに、体外循環という非生理的状況下での患者管理を教わり、重要臓器不全の管理、感染管理のノウハウを教え込まれ、これらが、重症患者さんの全身管理のトレーニングに発展していくわけであります。このような知識、経験は、いずれの領域においても重症患者さんの管理上、必須のものであります。こういった重症患者さんの全身管理を経験し理解することは、いずれの領域においても重症患者さんの管理として必要とされるため、一人前の専門医になるためには、一時期このような経験を積んでおくことは重要と考えます。麻酔医や救急医のみならず、一般外科医においても、内科医においても誰もが理解経験しなければならない分野です。学生さんや研修医の皆さんへ訴えたいことは、決して無理に心臓血管外科医になれとは言いませんが、一時期、こういった全身管理をマスターするために、心臓血管外科領域に足を踏み入れてみませんか!急がば回れという言葉の様に!

呼吸器外科サマースクール2012

香川大学医学部附属病院 呼吸器乳腺内分泌外科 横見瀬 裕保

第2回呼吸器外科サマースクールが2012年7月21日~22日まで真夏の神奈川県で行われました。

胸部外科に興味を持ってもらうため、初期研修医、医学部学生を対象に昨年から行われています。全国から79名の受講者、34名のインストラクターが集まり、呼吸器外科手術手技の実習・習得、若手呼吸器外科研修医のシンポジウムを中心に熱く、深く勉強してもらいました。初日の夜は懇親会・二次会・三次会・それ以降を通じて受講者同士、受講者とインストラクターで深夜まで、さらに熱く語り合っていたようです。

呼吸器外科医は今、広く必要とされていますし、とてもやりがいのある分野です。このサマースクールは来年も行う予定です。

呼吸器外科に興味のある方は気軽に参加して下さい。

“Memento Mori”と心臓外科医

神戸大学大学院医学系研究科 外科学講座心臓血管外科学研究分野 教授 大北  裕

心臓外科医は常に死に想いを馳せ、生に憧れている集団です。Memento Moriとは、“死を忘れるな”と邦訳されることが多い警句ですが、我々の現場は、常にこの様な緊張感に溢れています。19世紀末、Theodor Billroth先生が“心臓手術を試みる者は同僚から軽蔑されよう”と警告されて、100年余経過した現在、彼の予想とは裏腹に心臓手術は長足の進歩を遂げてきました。しかしながら、心臓外科の臨床現場は他の外科領域に比べて“生と死のせめぎ合い”が直接目に見える所です。手術戦略の適否、手技の精確度がこれほど直截に手術成績に反映する領域は他にありません。自らの依って立つところの患者の最大幸福のために、心臓外科医は絶え間ない精神、頭脳、技術のtrainingを要求されます。厳しい労働、内科医の進出、社会からの圧力などの逆風下、心臓外科領域に参入しようとする若人が及び腰になるのは理解できますが、我々は患者さんにとって最後の砦です。逃げ隠れするわけにはゆきません。

君たちは最近、胸の内、心ときめくことがありましたか?急性大動脈解離や急性心筋梗塞で瀕死の患者が外科手術により生還した時の感動は当事者でないと分かち合えない至福です。一方元気で入院してきた乳幼児が冷たい骸となってお見送りしなければならないときの慚愧は耐え難いものです。また自分が教育した後進たちが大きく成長してゆくのを目の当たりにするのも幸福な瞬間です。我々の現場は厳しくはありますが、多くの感動に満ち溢れ、皆明るく頑張っています。いやしくも国税の援助を受けて医師免許を獲得したからには真の“国手”たり得るべく、一度、“生と死が待った無しの鎬を削る”環境、心臓外科に淫してみませんか?

“呼吸器外科分野のやりがい”

香川大学医学部附属病院 呼吸器乳腺内分泌外科 横見瀬 裕保

肺は命にかかわるバイタルオルガンにもかかわらず、普段は大きな顔をしていません。ところがここと言うところで真価を発揮します。そんな臓器を扱う呼吸器外科に密かな、そして大きな魅力を感じます。対象疾患である肺癌はこれから20年増加し続けます。唯一の根治治療が手術です。呼吸器外科医にしか出来ないのです。治療成績を上げるためにやらなければならない基礎的研究が山ほどあります。摘出した腫瘍の解析は外科医の仕事です。移植、再生と研究は未来に続きます。

患者さんからの絶大な信頼は医者冥利に尽きる

大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座心臓血管外科 教授 澤  芳樹

私は、人の命に直接かかわる医者になりたいと思って救急医療と迷いながら心臓血管外科を選んだ。一人前になるのに厳しいトレーニングが必要だが、得られるものも大きい。典型的なチーム医療であり、達成感も大きく責任も大変大きいが、患者さんからの絶大な信頼は医者冥利に尽きる。しかも何といっても心臓という臓器は面白い。生理学として理解しやすいうえに、完全復活もあり得る。人工心臓、心臓移植そして再生医療だ。是非、諸君の熱いHeartをHeart surgeryに賭けて、天職として一生その醍醐味を味わってほしい。

最難関の手術に挑戦してみませんか?

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 生体防御腫瘍医学講座 胸部内分泌腫瘍外科学分野 教授 丹黒  章

私の専門は食道外科です。外科医になってすぐに日本外科学会に入会しましたが、同時に胸部外科学会にも入会しましたので、入会して30年になります。米国の胸部外科学会も心臓血管外科、呼吸器外科、食道外科が3本柱であり、日本胸部外科学会への食道外科医の参加は必要だと考えています。食道癌の手術は消化器外科手術の中で最難関であり、手術点数も一番評価されています。食道は咀嚼した食べ物を胃へと運ぶ短い管状臓器でありながら、気管、肺、心臓などの重要臓器に囲まれ、リンパ網が複雑に取り巻き、表在癌でも広範なリンパ節に転移を起こします。食道外科専門医制度もできたばかりです。ブラックジャックを目指す若い医師たち、最難関の手術に挑戦してみませんか。

“やりがい・究極のチーム医療・Excitingな分野”

佐賀大学医学部附属病院 胸部・心臓血管外科 教授 森田 茂樹

心臓血管外科はやりがいのある仕事です
想像してみてください。心臓血管外科医になったあなたの目の前にショック状態の大動脈破裂の患者さんがいます。それを救えるのはあなたしかいないのです。心筋梗塞のあとの乳頭筋断裂。瀕死の患者さんを救うのはあなたなのです。最後の砦をまもるという責任は重い。でもこれほどやりがいのある仕事もありません。
心臓血管外科は究極のチーム医療です
あなたの完璧な手術を支えるのは、内科医、麻酔科医、人工心肺技士、手術室の看護師、そしてICUと病棟のスタッフ。この歯車のどの一つを欠いても患者さんを救えません。それだけに患者さんを救った喜びはチームみんなの喜びです。患者さんの笑顔とスタッフの笑顔に囲まれるときがあなたは至福のひとときです。
心臓血管外科、Excitingな分野です
開心術、人工心臓、心臓移植、つねに先端を牽引してきた心臓血管外科医。今も大動脈ステント、ロボット手術、心筋再生医療、と新しい分野は尽きません。あなたが歴史をかえる1ページ、そのための扉は目の前に開かれています。心臓血管外科のExcitementを一緒に共有しましょう。

天職として取り組む価値のある分野

東京医科大学病院 外科学第1講座 教授 池田 徳彦

呼吸器外科医の最大の仕事は肺癌の根治切除です。定型手術の他に、合併切除を伴う拡大手術、早期癌に対する縮小手術、内視鏡手術、またロボット手術など、呼吸器外科の日常臨床は高速に変貌しています。移植医療も増加の一途を辿っています。この様な状況の下、我々は指導者として、次世代を担う呼吸器外科医を真剣に育成しようとしています。きちんとした指導のもとに一定の経験を積めば、必ず一流の技術を体得することができます。最先端を走る快感は何物にも代えがたいものがあり、特に専門性の高い呼吸器外科ではそれが実感できるでしょう。天職として取り組む価値のある分野であることを学会員の全員が保証いたします。

“心臓外科の面白さ”

弘前大学医学部 胸部心臓血管外科 教授 福田 幾夫

30年前、医学部を卒業して医療に従事してみると、学生の頃に想像していたことと実際は随分異なることがわかりました。2年間の外科研修でさまざまな外科系診療科を回り、それぞれに面白いと感じました。心臓血管外科は血行の再建により、患者さんが劇的に回復し、起座呼吸でベッド上で仰向けにさえ寝られなかった患者さんが、元気に歩いて退院してゆくこと、手術の成果に涙を流して喜んでいることに感激し、そのやりがいの大きさに心を動かされ、生涯の仕事にすることに決心しました。当時は人工心肺装置の性能も劣り、手術の危険率はきわめて高く、先輩達からはこのように言われました。「心臓外科をやっていてやりがいを感じ、よかったと思うと同じ位、悲しい思いもして、選ばなければ良かったと思うこともある。それでもやりたいなら、覚悟を決めてやりなさい。」と。今は手術成績も向上していますが、昔に比べてはるかに重症な症例を手がけるようになっています。しかしながら、退院した患者さんに外来で会った時に、みなさんは医師という仕事の本当のやりがいを感じることでしょう。スポーツでも山登りでも、困難が多いほど達成した時の喜びは大きいと思いませんか?胸部外科学会では、若い外科医が良い環境で仕事ができるようにさまざまな努力をしています。来れ、熱い心をもつ若者達!

若い先生と共に世界最高の外科を

大阪市立大学大学院 消化器外科 教授 大杉 治司

みなさん、こんにちは。私は食道外科を専門にしています。まずみなさんにはやり甲斐があり、自分の好きな分野に進まれることが第一です。この条件を満たせば人生を有意義に楽しく過ごすことができます。私は食道外科に出会ったおかげで楽しく過ごしています。本邦の消化器外科は欧米先進諸国と比較して非常に高いレベルにあります。特に食道癌手術は他の追従を許さない地位を確保しています。食道外科の遂行には消化器外科、胸部外科、耳鼻科に及ぶ技術とさらに化学放射線治療などの知識が必要で、決してたやすい道ではありません。しかし好きで、やり甲斐があるとこの道を歩むのが楽しくなります。私は卒後30年を過ぎますが、胸腔鏡手術をはじめとする食道癌手術はいまだに自分の技術が日々進歩するのを感じています。この道は先が見えないから、益々ゴールへの道程をもっと楽しむことができそうでわくわくします。より高い山、より遠い道にチャレンジしたい若い先生と共に世界最高の外科を行いたいのです。

“ネットワークを使って情報を得よう”

東京女子医科大学 心臓血管外科 冨澤 康子

外科を選択する医師は減っていますが、外科を選択する女性医師は増えています。2010年2月に私は米国の「女性外科医のためのキャリアシンポジウム」に参加しました。多数の女性医学生・レジデントが女性外科医に混じって参加していました。10月の米国女性外科医会秋の大会では20名の医学生・レジデントが研究をポスターにまとめて発表し、優秀演題には賞が贈られました。成功した女性外科医達と医学生・レジデントが一緒にテーブルにつく、ネットワーク作りもありました。今後、胸部外科医を目指す女性医師のためにこのような機会をたくさん作ってあげたいと思います。

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